技術コラム

2025/10/17

その他

水素で走るって本当?トヨタのもう一つの未来を金型技術で支える

「世界のトヨタの水素で走るCRカートが展示されるらしい」

そんな噂が流れたとき、弊社の工場ではちょっとしたざわめきが起きました。なぜなら、その顔となる部分、白い樹脂パーツの金型を弊社が作成していたからです。

こうしたニュースに触れるたびに、「日本のものづくり」の素晴らしさを実感します。今回は、この素晴らしい製品に携われた喜びとともに、トヨタがどのような考えで水素を選んだのか、その技術的背景をご紹介させていただきます。

>>常識を打ち破る!カーボンニュートラル燃料(水素)GRカートの外装を実現した特殊ブロー金型 | 製品事例 | 特殊ブロー金型 設計・製作.com

>>GRカート用カーボンニュートラル燃料タンク金型 | 製品事例 | 特殊ブロー金型 設計・製作.com

「電気自動車が主流のこの時代に、なぜ水素なのか?」

「電気自動車が主流になってきたこの時代に、なぜトヨタは水素にチャレンジしているのか?」

そんな疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。水素と聞くと「爆発の危険性は?」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その技術背景を調べてみると、非常に興味深い戦略が見えてきます。

EVだけでは不十分?トヨタの「マルチパスウェイ戦略」

現在、世界はEVブームの真っ只中です。充電して走る、静かでクリーンなクルマが急速に普及しています。

しかしトヨタは「それだけでは不十分」という立場を取っています。

なぜか?

それは、世界中の人々が同じ環境にいるわけではないからです。電力供給が安定している国もあれば、そうでない地域も存在します。だからトヨタは「EVも、ハイブリッドも、水素も、すべてを育てる」という”マルチパスウェイ戦略”を掲げています。

地域や用途に応じた最適な選択肢を提供する、この包括的なアプローチは、グローバル企業としての責任ある姿勢といえるでしょう。

水素の優位性とは?

水素技術の特徴を、具体的に見ていきましょう。

長距離運用に強い(トラックやバスに最適)

電気自動車は、バッテリーの重量が課題となります。長距離走行を実現しようとすれば、より大容量のバッテリーが必要となり、車両重量が増加してしまいます。つまり、【長距離=車両の重量化】という構造的な課題があるのです。

一方、水素は異なります。水素タンクは軽量で、エネルギー密度が高いという特性を持っています。そのため、重量のある商用車でも軽快な走行が可能です。

さらに、商用車にとって稼働時間は重要な要素です。EVの充電時間がネックになる場面でも、水素はガソリン同様、数分で補給が完了します。

つまり、【停車時間を最小化できる】ことが、物流や公共交通において大きなメリットとなるのです。

排出は水だけ——水素が「究極のエコカー」と呼ばれる理由

水素が「究極のエコカー」と称される最大の理由は、燃料として使用した後、車両から排出されるのが「水」、それも「飲用可能なレベルのきれいな水」だけだという点にあります。

この「水だけ」という特性のすごさを、2つの視点から解説します。

1. マフラーの常識を覆す「透明な排出物」

従来の内燃機関車は、マフラーから黒いすすや刺激性のある排気ガスを排出してきました。

それに対し、水素車(FCEV)のマフラーから出るのは「湯気」です。冬の寒い日には、そのまま路面に水たまりができるほど、純粋な水が排出されます。

この「無色透明」な排出物は、有害物質はもちろん、CO2すら排出していない完全なゼロエミッションの証明です。排出ガスを目で見て「クリーン」だと確認できるほどの変化は、まさに次世代技術の象徴といえます。

「マフラーから水が出ている」という光景は、一見すると異常に思えますが、水素車にとっては「正常に稼働している証拠」なのです。

2. 「空気清浄機」を搭載した車両

さらに注目すべきは、水素車は単に水を排出するだけではないという点です。

実は、走行しながら空気をきれいにしているのです。

水素車(FCEV)が発電のために空気を取り込む際、車両に搭載されたフィルターが、空気中のPM2.5や花粉といった有害物質をろ過・除去しています。

つまり、FCEVは水素を使って走行するだけでなく、高性能な移動式空気清浄機としても機能しているわけです。大気汚染の一因とされてきた自動車が、逆に空気を浄化するという、走行以上の付加価値を持つ技術といえます。

圧倒的な安全性・信頼性——極限環境で鍛えた技術力

水素と聞くと「爆発の危険性は?」という懸念を持つ方もいらっしゃるでしょう。

しかしトヨタは、この点において非常に厳格な基準を設けています。FCEV(MIRAI)は世界中で販売されており、水素カートは過酷なレース環境で何百周もの走行を重ね、技術を磨き上げてきました。その安全性のレベルは、業界トップクラスといえます。

技術力に裏付けられた安全性

高圧・極低温への耐性: 水素を70MPa(メガパスカル)という超高圧で貯蔵する技術や、液体水素のマイナス253℃という極低温下での部品の耐久性・信頼性は、世界最高水準の技術です。

安全設計の3原則: 「漏らさない」「万一漏れても直ちに検知して停止する」「漏れても溜めない」という徹底した設計思想。タンクの構造、バルブの精度、センサー技術など、すべての部品が高次元で統合されています。

モータースポーツでの実証: 実験室ではなく、耐久レースという実戦の極限環境で開発と検証を行うことで、技術の熟成スピードと信頼性を飛躍的に高めています。これはトヨタらしいアプローチといえるでしょう。

まとめ

弊社も自動車関連の業務に携わる中で、近年は「EVシフト」のニュースばかりが目立ち、日本の自動車産業の未来に不安を感じる声も少なくありませんでした。

しかし、今回のモビリティショーでトヨタが示した水素技術の進化、特に「水だけを排出するGRカローラ」の姿は、そうした不安を払拭する、圧倒的な可能性を感じさせるものでした。

排出するのは究極にクリーンな「水」だけ。そして、そのクリーンさと安全性を、マイナス253℃という極限環境で実現する技術。これは、過去の成功に満足することなく、未来の課題に真正面から立ち向かう、日本が誇る「ものづくり」の精神と技術力の結晶です。

弊社がその一部を担う中で確信するのは、モビリティの未来は、決して一つのエネルギーに依存する「一本道」ではないということです。水素、電気、そしてその両方を支える超精密な金型技術——多様な選択肢を切り拓くこの挑戦こそが、停滞したムードを打ち破り、社会に豊かで、次世代に夢のある未来をもたらすと信じています。

金型づくりは技術だけでなく、それを必要とされる方々との情熱と創意工夫の結晶です。弊社は試作から量産まで、常に最高のものを提供するために進化し続けます。お客様にご満足いただける金型をお届けすることが、私たちの使命です。

                    

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